7/22(月)くもりのち雨
恋人が朝からむっちゃんで遊んでいる。わたしはテーブルでおにぎりを作っている。むっちゃんが寄ってきたら足をあげてやる。水拭きしてもらった。
7/23(火)晴れ
朝、半額で買ったパンを食べる。たまごペーストが入っている。一口目、やわらかい。二口目、顔をしかめる。三口目、まずいとわかる。四つのうち三つ食べてやめる。へんな具合にまずいものは、一口目で吐きだすだとか、異臭がするだとか、そのようなことはなく、ただ食べつづけられないのだと知る。残りの一つを恋人にやる。はじめは「まずくはない」と食べていたのに、食べ終えて「まずいな」と言った。やはりまずいのだ。
晩、桃をむく。恋人が職場のひとにもらったらしい。台所に恋人がやってきて一切れつまむ。ドラマのワンシーンのようだった。しかし、これがドラマならば、わたしと恋人は別れる運命だよな、と思う。あまい、あまい桃だった。
7/24(水)くもり 夕方、雨
ZINEをつくるために日記を読みかえす。大学をやめた去年の秋より随分と調子が良くなっていることに気づく。日記を通して、ゆるやかな変化を伝えられたらいいなと思う。
7/25(木)晴れ
職場のひととごはんへ。
こういう場での立ち回りがいつも下手で落ちこむ。にこにこ話を聞くだけ。じぶんのことをほとんど話さない。どっ、と疲れる。
7/26(金)晴れ
本屋にいたら「充電できません」と通知が入った。むっちゃんが充電スポットに帰れなくなったらしい。帰宅したら、充電スポットが別の場所にあった。掃除中にケーブルを巻きこみ、抜いてしまったようだった。渋い声で喋るくせにどんくさい。
昼を食べながら朝ドラを観た。トラちゃんが娘の優未に「拠りどころは友達じゃなくたっていい」と言った。わたしはずっと誰かにそう言ってもらいたかった。
わたしの拠りどころ
日記・本・音楽・ぬいぐるみ・没頭・恋人
暑いなか買いものに出る。毎週金曜の買い出しがたのしみだ。先週はまだすこししか咲いていなかった淡い色の百日紅がワッと咲いていた。暑い時間のスーパーは空いている。気になっていた明太子チューブを買う。これでおにぎりを作ろう。
晩はハンバーグ。じぶんのすきなものをおいしく作れるようになってうれしい。
7/27(土)晴れ
小さい子がデザート売り場で「プリン・もずく・ヨーグルト」と指さしていた。
退勤後、バゲットを買いにいく。二割引きだった。フレンチトースト・明太マヨ味・ガーリック味にする。パイナップルの酎ハイを飲む。恋人が出張の間、一カ月半もひとり暮らしをしたのに、いまだにひとりの夜が苦手でお酒を飲んでさみしさを誤魔化している。酔って眠る。
21時ごろ起きて、YouTubeを見ながら頼まれていた裾上げをした。『楽園』という舞台が無料で公開されていた。土居さん(トラつばのよねさん)がお知らせしていて気になった。たびたび口論のシーンがあり引きこまれる。人のいやーな部分がよく描かれている。こういうおばさんいるいる。裾上げ、無事におわる。
7/28(日)晴れ
広告を見たらしめじと茄子が安かった。昼を買うついでにスーパーへ。しめじはほぐして冷凍した。茄子は晩のキーマカレーに入れた。
早めに夕食をとって何品か作り置きする。
小松菜のおかか和え・茄子の煮びたし・厚揚げのきなこ和え・たぬきおにぎり
7/29(月)晴れ
人に優しくできなかった。ひどく落ちこむ。
恋人がお土産に桃をくれた。四つ。すっと切れ目を入れて左右にひねる。種も半分に割れて、ピーナツのような小さな種が出てくる。こういう種を見ると埋めてみたくなる。捨てる。甘い桃だった。もっと甘くなりそうだ。残りはゆっくり食べよう。
7/30(火)晴れ
恋人は休日。寝ている姿を見てぺらぺらだなと思う。
IHの掃除をしてから出勤する。重曹を撒いて、水をつけたアルミホイルでこする。汚れが落ちるとこころもすっきりする。思いのほか掃除がたのしかったので、はやく汚れないかなとばかなこと思っている。
レジばかりの日はこころがすり減る。恋人をサイゼリヤに誘う。ドリンクバーを頼む。ジュースが沁みる。
人とじぶんを比べては苦しくなっている。じぶんを鼓舞できるときと、ただじぶんを傷つけているときがある。今日は傷つけた。恋人に「人とじぶんを比べることがあるか」と聞いたら、「あるかもしれないが、自覚が薄い」というようなことを言っていた。
7/31(水)晴れ
気分、最悪。ぎりぎりまで布団で過ごす。
洗面所に向かう。目が腫れていないか、鏡に顔を近づける。睫毛がくりんとしている。こんなに、くりん、だったか? 昨晩、泣きすぎたからだろうか。ひとりで笑う。笑ったら持ちなおした。
晩は春巻き。揚げものをすると気分が悪くなる。
8/1(木)快晴
一日中、胃がめらめらとしていた。午前中はこころ、午後はからだがしんどかった。どうにも夏が苦手である。
風呂から上がって、ひっ、ひっ、ひっ、としゃっくりをしていて恋人に笑われる。しゃっくりはひとを不快にさせない生理現象だね、と話した。
明日から恋人が二泊の旅行で家を空ける。
近ごろのじぶんの言動をふりかえると、すこし離れる時間が必要だと感じた。ちょうどよい。
いつか恋人もわたしの目の前からいなくなるのではないか。心の底にそういうきもちがある。それは恋人に対する不信感から生まれたものではなく、何度も人に裏切られた経験によるものである。たいせつになればなるほど、失うのがこわい。だから、あなたの愛はほんものなのか、と問うように、怒ったり喚いたりしてしまった。
怒ったり喚いたりしているじぶんは正気を失っていた、と後になって思う。
じぶんの気質に問題があるのではなく、きっと病気なのだ。つらい経験(トラウマ)がいくつもあり、感情をコントロールできないことがままある。わたしについた診断とセルフケアについての本を読んでいる。そういう症状のことも書かれている。
本を読んでいたら「大人である自分を拠りどころにする」とあった。「拠りどころ」は近ごろよく考えていることだ。よい考え方だと思った。実家を出て、自分の稼ぎで暮らして、自分でごはんを決めて、行動の責任はすべて自分にある。もう、わたしは自由で安全なのだ。逃げられなかったこどものころはと違う。
8/2(金)
日が昇る前に恋人を見送って、そのまま起きていた。日記をつけて、散歩に出る。まだ暑くない。堤防を歩く。実家に住んでいたころもよく堤防を歩いた。人がいるから堤防がすきなのかもしれない。不思議と安心する。琵琶湖の方を向いて進む。琵琶湖まで5.5キロと書いてあった。暑くなかったら歩けた。
じわじわと汗が出てくる。どこまで歩こうか、と思っていたら、百日紅の木が見えて、そこまで歩くことにする。堤防を下りて、道を渡って、木のそばに行く。「広場」と呼ばれるところに一本だけ立っていた。濃いももいろ。満開である。
帰ってシャワーを浴びる。映画を途中まで見て二度寝した。
調子が悪いと適当な食事になる。夜は菓子パンとお酒だった。
映画の続きを観る。『ドーナツもり』という約40分の映画。「あなたのことすきだよって最高の褒め言葉じゃないですか」という台詞がよかった。こそばゆい。けれども、具体的なことを褒められるより、「すき」と言われるほうがずっとうれしい。何事も。
8/3(土)晴れ、かなり暑い
4時に起きる。死がちらつくほど、落ちこんでいる。ひとりでいては危ないと思い、実家に帰ることにした。
品出しをしながら、苦手なことを克服せず苦手なまま生きていく人生でもいいのではないか、と思った。苦手なことを自分で認める。仕方がない、と思う。「人と自分を比べて苦しくなる」の一つの対処法だ。答えが出た。
退勤して、新快速に乗る。いつもは大阪で阪急電車に乗り換えるが、淀川の花火大会があるため、阪急迂回ルートを使う。200円アップ。淀川を通過するとき、みんな窓の外を見た。川沿いにたくさんのひとがいた。最寄り駅から家まで歩いていたら、雷の音が聞こえる。こんなに晴れているのに? あとで花火の音だと気づく。
8/4(日)晴れ 夕方、雨
妹と梅田へ。ほしかったぬいぐるみを買う。
帰りにパン屋に寄る。パインアメのパンを恋人に買う。ぜったいすきだ。
大阪を出るころ、土砂降りだった。地下を通ってダイソーに行く。傘を買う。アプリを見たら、雨雲とともに滋賀に帰ることになりそうだったので、前もって買っておく。
山科を過ぎたら雨が止んだ。傘を買わずに雨が降ったら後悔しただろうに、傘を買って雨が止んでも後悔はしない。スーツケースを転がして家まで歩く。
母の言葉の端々に棘がある。ちゃんと傷ついていた。実家を出てからも歩み寄ろうとがんばってきた。どうしてうまくいかないのだろう。ひとりの部屋で泣き叫ぶ。恋人が家を空けていることも相まって、孤独〈強〉を感じた。睡眠薬を四錠飲んで、泥のように眠る。たまにやってしまう。前回も四錠だったと記録にある。だめだけれど、死ぬよりはずっといい。日付が変わる前に起きて、シャワーを浴びた。冷蔵庫から桃を出して、むいた。最後の一個だ。食べごろなのかきれいにむけた。気に入っているカニのフォークで食べた。2時半くらいに恋人が帰ってきて、安心して、また眠った。