9/16(月)くもり

妹とモーニングへ。口内炎ができているのでオレンジを妹にあげる。たまごサンドを一口もらう。たまごペーストとオーロラソースが挟まっていた。オーロラソースいいね。また真似しよう。と話した。

 

9/17(火)くもり

バスを二回乗りかえて舞洲へ。シール貼りのバイト。ペアと確認し合うとき以外は黙っている。空想に耽る。空想が捗ればシールにしわができる。社員さんにしわを伸ばしてもらう。マジックだ。建物の廊下で嗅いだことのあるにおいがして、大学の七号館のにおいだと帰りに気づいた。できたての建物のにおい。

 

9/18(水)晴れ

不正出血があった。薬の副作用として出ることがあると聞いていたが、はじめてのことだ。薬を飲んで月経をなくして二年が経つ。些細なからだのエラーなので恐れることはないが、じぶんの血を見て狼狽えた。

 

夜中に涙が止まらなくなって河川敷へ。風が心地よい。こころのなかでおしゃべりがはじまる。

 

わたし、話すの下手やと思って生きてきたんですよ。みんなわたしと話すん嫌やろな、たのしくないやろな、って思ってました。ひどいときは〈きもい〉って思われてるかもなって。それで、なんでそう思うようになったんか、思いかえしてみたら、母に言われたんです。あんたは喋るん下手くそや、と。事あるごとに言われてました。こどものころって、親の言うことがすべてというか、ふつうというか、世界というか、そう思うじゃないですか。だから、わたしはあかんねやって思って、次第に喋れんようになってしまったんです。小学校の高学年くらいでしたね。ちょうど女子のいざこざに巻きこまれてましたから、余計に。そのまんま、進学していって、高校ではともだちができひんくて、大学もうまくいかんかった。話すんが下手なことが問題じゃなくて、話すん下手な人間はきもちわるいって捉えてたんやと思います。まあ、でも、よりどころみたいなんはあって、それがアルバイトやったんです。おかしなことに接客の仕事ばっかりしてきたんですよ。お客さんとはいくらでも喋れる。カラオケ屋で働いてたときはティッシュ配りもしてました。めっちゃ得意やったんですよ。知らへんひとにもへらへら話しかけれる。でも、従業員と話すんは苦手でした。嫌われたくないなってずっと思ってました。喋るん下手くそな人間が好かれるわけないじゃないですか。

 

image

いろいろあって、いま川を眺めているわけです。川面に映るひかりがすきなんです。あれを見てると落ち着くんです。ほんまに喋るん下手くそなんやろか、といま考えてます。親以外に喋るん下手くそって言ってきたひとはおらへんな。喋るん下手やからなくなった人間関係ってないな。ああ、ほんまは下手じゃないかもしれへんなって思うわけです。呪い(のろい)ですよ、こりゃあ。人ってほんまにちょっとしたことで呪われてしまう。きっと若ければ若いほど。呪いにかかってたことに気づいたわけです。気づいたってことは呪いが解けたも同然で、わたしはたぶん、人と喋れるようになると思います。自己評価も上がると思います。えらい遠回りしてしもうたけど、もう大丈夫やから。話長い? それはごめんやで。

 

9/19(木)晴れ

18時、駅のマクドの前で落ちあう。ともだちと飲んだ。窓際の席に座った。二人ともさほど飲めないのでスローペース。近況を話す。まわりの声に負けて、聞きかえす。聞きかえされる。わたしたちだけカフェにいるときの声のボリュームだ。時折、立ちあがって酔っていないか確かめる。ともだちは身振り手振りが増えていく。

 

店を出てから河川敷を歩いた。結婚はしたいとかポイントカードを作りたいとか、話す。Sポイントカードを力説してしまった。

 

9/20(金)晴れ

昼ごはんを買いにいく。用水路の水がさらさらと流れている。いつもは淀んでいる。

 

9/21(土)くもり

三宮で阪神電車に乗りかえる。浴衣を着ているひとがちらりほらりと見られる。飾磨でほとんどのひとが降りた。みなさん一緒に姫路に行くものだと思っていた。今日は花火大会があるらしい。わたしは姫路で降りてJR山陽本線に乗った。やまぶきいろの電車だった。窓から何も見えず、地下鉄に乗っている気分だった。最寄り駅からずっと座れたものの、おしりが痛い。19:38 岡山駅に着いた。三時間半の移動。

 

イオンモールのダイソーで靴擦れパッドと絆創膏を買った。新品のパンプスを履いてきて靴擦れした。明日はかなり歩くつもりなので、はやめに対処する。

ホテルにチェックインした。ホテルにクレンジングがなく、もう一度ダイソーに行って調達した。Wi-Fiもなかった。

 

「トロ函六曜」という店で牛すじカレーを食べた。店のひとが「なんでまたここに来たの、ここ入りにくいでしょ」と話しかけてくれた。何でうちを見つけたの。どこから来たの。カウンターから出てきてくれる。電車でひとりで来た、と話したら「昨日もそんなお客さんいたわ。自由なひとたちだねえ」と言われてうれしかった。

ジリリリンと鳴った。まさか、と思って顔を上げると、そのまさか、黒電話だった。店のひとが電話をとって「(午後)11時までやってます」と言った。常連のひとなのか、知り合いなのか、若いひとたちがケーキを持ってやってきた。店のひとと誕生日パーティーを開いている。へんな店だ。去り際、店のひとが「気をつけて」と見送ってくれたのも、またうれしかった。

 

コンビニで酎ハイを買って、近くの川で飲んだ。誰もいなかったので歌った。かなしみにむかうよるも~ ゆるがずにひかっていてよ 水面に映る岡電のひかりがきれいだった。ホテルであほみたいに泣いて寝た。

 

9/22(日)くもり 一時、雨

たぶん1時くらいに寝て、4時に起きた。朝食の時間まで本を読んだ。

7時ごろ、チェックアウトした。ホテルを出たら、地面が濡れていて空がどんよりしていた。雨雲レーダーを見ると午前中に一雨あるらしい。後楽園に向かう。連休中だから混むだろうと思って、7:30のオープンに合わせて行くことにした。岡電に乗る。路面電車がすきだ。三つ目の駅で降りるはずだったのになぜか着かない。Googleマップを見ると、直進するはずのところで曲がっていて、路線を間違えたのだと気づく。とりあえず降りる。歩ける距離だった、よかった。今日の目標は3万歩なのでちょうどよい。汗ばむ。

後楽園のなかを歩いて、外も歩いた。かたつむりも歩いていた。

 

オリエント美術館でガラスの展示を見た。

汗がひいてからだが冷えてしまい、お腹が痛くなる。途中でお手洗いに駆けこむ。洗面台がかわいい。鮮やか。「ラスター彩」の陶器が使われている。お腹をさすりながら展示を見る。リュックサックの横のポケットに入れていたiPhoneがないことに気づく。さっき、トイレでかばんを落下させたからそのときに落ちたのだ。もう一度トイレに駆けこむ。ちゃんと落ちていた。洗面台を一瞥して戻る。

 

ガラスの技術が発達し、いまと同じくらいの透明感の杯ができる。そのとき、赤ワインが映えたのではないか、というようなキャプションを読んで興奮した。ほとんどの作品に説明が添えられていて、知識が乏しくても楽しめた。

「薩摩切子」という日本のガラスもあった。あかいろの模様が血のように見えて〈刺身はのせたくないな〉と思う。たぶん、刺身用の皿ではない。

美術館を出たら雨がぱらついていた。ダイソーに傘を求めにいく。商店街を通る。

 

雑貨屋と本屋に寄って「ぴいぷる」という喫茶店へ。

わたしが店に入ると店主が後ずさりした。ヨーグルトは機械があったまるまで待ってねと言われる。ソフト・ヨーグルトというものを目当てに来た。壁のメニューを見ていたら「いまの時期はすだちがいちばん人気」と教えてもらい、それを頼む。他にバナナやチョコレート、レモン、ブルーベリーなどがあった。

 

店主と話す。白髪を結っている。エプロンは酒屋っぽいやつ。

年齢を訊かれて「22」とダブルピースして伝える。「22? 22なんてまだ何にもキャッチしてないね。これからだよ」と言われて悔しくてうれしかった。この文脈において、人生のことをわかった気になって、砕けているわたしの言葉は何の効力もないが、この時間のことをだいじに、だいじにしていくと思う。

常連と思われるひとがやってきた。「アイスコーヒーで」「アイス?」「だってこの店、あっついんだもん」ソフト・ヨーグルトは冷たくて何度も頭がキンとなった。

 

電車で倉敷に出る。阿智神社にお詣りした。おみくじを引く。棒にひらがなが書かれている。授与所に貼られたひらがな表を指差して伝える。「し」のおみくじを受けとった。「時運にも立場にも恵まれず思い通りの結果を得られないとき」とあった。

色とりどりのおみくじが結んである。わたしのおみくじは白だ。定番ではないものを引いたのかと思っていたが、帰ってから調べたところ、48色あり、どうやらたまたま白いものを引いたようだった。

 

美観地区を散策した。あれもこれもほしくなる。お土産を買ったら「気をつけて」と見送ってくれた店があり、うれしかった。日頃、家を出るひとに必ず「気をつけて」と言う(「気をつけて」と見送ると事故率が下がるという話を強く信じている。言ってどうにかなる可能性があるなら、言う)。わたしの「気をつけて」は呪い(まじない)のようなものだが、旅先で言ってもらう「気をつけて」は軽やかでよいと思った。前者は「無事に帰ってきてね」、後者は「お元気で」ということか。

 

LINEやメールで日記更新のお知らせを受け取れます。