10/7(月)雨
起きた瞬間から調子が悪かった。一週間働いて、ここは安全な場所だと思えている。それでも、フラッシュバックや侵入的なかなしみがやってきて、涙が出た。水分補給のふりをして、ロッカーで落ちつくまで泣いた。ロッカーの内側にある鏡を見た。目がぱっちり二重になっていた。瞼をむにゅむにゅと押していつもの奥二重に戻す。
退勤後、モスバーガーへ。誕生日にともだちがLINEギフトをくれた。とてもがんばった日か、とても落ちこんだ日に行こうとお守りにしていた。とても落ちこむ日が先に来てしまった。ホワイティの店舗に入った。モスチーズバーガーセットを頼む。これがいちばんすきだ。ドリンクは限定のさつまいもシェイクにした。作業をしているひとが多い。そのひとたちを眺めながら食べて、いいことを思いついて頭のなかで練っていく。おもしろそうだ。こういうことばかり考えていたいのに、かなしみが侵入してくる。ほんとうにつかれる。なんとか今日も乗りこえられた。とても落ちこんだ日で、とてもがんばった日であった。
10/8(火)くもり 夜は雨
昨日のしんどさが尾を引いている。休みの連絡をいれた。泣いて、泣きやんで、泣いて、とくりかえす一日だった。
夜中の河川敷でボイスメモを録った。マイブーム。いまのきもちや目標をひとりでぽつぽつ喋る。喋ったあと、音声を聞いた感想は「意外と変な声じゃない」「めっちゃ励ますやん」。
幼稚園のとき、両親が運動会のダンスの動画を見ていた。苦痛で二階の部屋に逃げた。「めっちゃおもろいで、来て」と父に呼ばれる。じぶんの失態を笑っているのかもしれないと思うと恐ろしくてかなわなかった。じぶんを撮られるのが苦手なこどもだった。
そんなわたしがボイスメモを残す。喋ることはすきだし、喋ることで考えが整頓されていく。学生時代もひとりで喋りながら勉強していた。じぶんに対して説得しているような感じ。書くこととはまた違った、飾らない言葉が出てくるので純粋におもしろい。このおもしろさを残しておきたいと思った。誰にも負担がかからないし、聞きかえせるのはじぶんだけだから失態を秘密にできる。なにより喋ることですっきりするから、飽きるまでやってみようと思う。
10/9(水)くもり
夕食を食べながら『それぞれの孤独のグルメ』を見る。食事しながら、ちがうものを食べている映像を見るのは、目の前の食事に対してちょっと失礼な気もする。五郎ちゃんの歩くスピードがはやい。いままでとはまた違ったアプローチ(五郎ちゃん以外のモノローグがある)のドラマだから、歩くのもはやいのかな、と思ったが、心の声もはやい。画面をタッチすると倍速になっていた。
10/10(木)晴れ
仕事中に涙が止まらなくなって、途中、休憩をもらった。もうおしまいにしようと思った。退勤したあと、でっかい川のベンチでコーヒーを飲み、尾崎豊を聴いた。ひとしきり泣いたら〈もうちょっとやれそう〉と思った。今日のこと忘れないと思ったが、最近はそんな夜ばかりだ。水面のひかりがぽやぽやと揺れていた。都会の川っていい。
10/11(金)晴れ
よく営業担当のひとが来る。うちのボスと仲が良く、いつも食堂で並んでごはんを食べている。そのひとと話した。「マイナーな仕事だからねえ」と言っていて、童心をくすぐられた。こどものころはみんながすきじゃないもの・流行っていないものがすきだった。大人になったいまもそういうワードにすこし弱い。
10/12(土)晴れ
晩は家で焼肉だった。わたしはサツマイモやエビを食べる。焼いた肉が苦手だ。二切れほど食べたら胃がむかむかしてくる。チェーン店の牛丼も苦手だ。おいしいけれど、すこしでいい。ミニサイズの半分もいらない。妹たちは「今日、焼肉やから仕事/塾をがんばった」と言っていた。わたしも「肉 ♪」と小躍りしたかった。一人焼肉のシステムに憧れるのに、肉が食えないから行けない。
エビを剥いていたら、母がむかしばなしを聞かせてくれた。動くエビの絵があって、商売繁盛している店があった。縁起がいいから赤く塗ってくれと頼んだら、エビは動かなくなった。エビは茹でられた。エビが赤くなる=茹でられた、ということである。調べたら「エビとカラス」という話だった。
10/13(日)晴れ
夜中に涙が止まらなくなった。あと何十年も生きなければならないなんて、こわい。